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ジムで同じように鍛えているのに、まわりの人ほど筋肉がつかない。走るのは昔から苦手で、学生のころの体力テストも楽しくなかった。そんなふうに、自分は運動に向いていないのでは、と感じたことはありませんか?がんばっても思ったように体が変わらないと、生まれつきだから仕方ないのかな、と考えてしまいますよね。
そこで、今回は運動能力と遺伝子の関係についてお伝えしていきます。
この記事では、運動能力とのかかわりが研究されてきた筋肉の遺伝子について、研究でわかっていることと、遺伝子の型にかかわらず大人にすすめられている運動の量を知ることができます。
遺伝子の「型」は、父母から受け継ぐ部品の組み合わせ
私たちの体をつくる細胞の一つひとつには、DNAという物質が入っています。DNAは、4種類の小さな部品がとても長くつながった物で、その並び順が、体の中でたんぱく質を作るための情報になっています。このうち、1つのたんぱく質を作るための情報がひとまとまりになっている区切りを、遺伝子と呼びます。
DNAの並び順は、ほとんどの所で人どうし同じです。ただ、ところどころに、人によって部品が1つだけ違う場所があります。私たちはこの場所ごとに、父親から1つ、母親から1つの部品を受け継いでいます。この2つの組み合わせを、ここでは「遺伝子の型」と呼びます。
遺伝子の型は生まれつきのもので、基本的に一生変わらないと言われています。運動をしても、食事を変えても、型そのものは変わりません。
速く動く筋肉にかかわる遺伝子と、その3つの型
私たちの筋肉は、細い糸のような筋線維(きんせんい)が束になってできています。筋線維には、ゆっくり長く動き続けるのが得意な線維と、速く力強い動きが得意な線維があります。
ACTN3(エー・シー・ティー・エヌ・スリー)は、このうち速く力強い動きが得意な線維の中で働く、αアクチニン3というたんぱく質を作るための遺伝子です。
ACTN3には、人によって部品が違う場所があり、その場所の部品は「R」と「X」の2種類です。父親と母親から1つずつ受け継ぐので、組み合わせはRR型・RX型・XX型の3通りになります。XX型の人は、αアクチニン3を作ることができません。
それでは、XX型の人は、体のことで何か困ることがあるのかというと、そうではありません。2003年にオーストラリアで行われた研究では、健康な一般の白人の人436人のうち18%がXX型でした。日本で行われた研究(2022年)でも、一般の日本人649人のうち26%がXX型でした。XX型は、健康な人の中に、ふつうに見られる型です。
ACTN3の型だけで、短距離向きとは決まらない
型だけで決まるわけではありません。
先ほどのオーストラリアの研究では、14の競技のトップ選手429人の型も調べています。短距離など瞬発力が要る競技の選手では、XX型は6%で、一般の人の18%より少なくなっていました。オリンピックに出た女子の短距離の選手には、XX型の人はいませんでした。一方で、長距離など持久力が要る競技の選手では、XX型は24%でした。
この結果だけを見ると、Rを持つ人(RR型・RX型)は短距離向き、XX型の人は長距離向き、と分けたくなるかもしれません。しかし、短距離のトップ選手の中にも、XX型の人は6%いました。日本の研究(2022年)でも、瞬発力が要る競技のトップ選手120人のうち18%がXX型でした。
また、日本の長距離のトップ選手79人と、一般の人96人を比べた研究(2011年)では、国際大会に出る長距離の選手で、Rの部品の割合が一般の人より高くなっていました。オーストラリアの研究とは、長距離の選手の結果の向きがそろっていません。
どちらの研究も、トップ選手という限られた人たちを、集団としてまとめて比べたものです。ですので、一人ひとりに当てはめて、どの運動に向いているかを決める数字とは言えません。
遺伝子の検査で、自分に合う運動を決めてよい?
運動と遺伝子を研究する各国の研究者たちが、2015年に共同の声明を出しています。声明では、いまの知識では、遺伝子の検査を、才能を見極めることにも、一人ひとりのトレーニングを決めることにも役立てられない、というのが研究者のおおかたの考えだとしています。
同じ声明では、どの遺伝子のどの型を調べているのかがはっきりしない検査があることや、結果の読み方を専門家に相談できる体制が、ほとんどの検査に無いことにも、懸念を示しています。さらに、子どもや若い選手に、トレーニングを決めたり才能を選び出したりする目的で、こうした検査を受けさせるべきではない、としています。
これまでの運動の経験から、自分は瞬発力の運動が得意なのか、持久力の運動が得意なのかを、なんとなく感じている方も多いと思います。しかし、それが生まれつきの遺伝子の型ではどう出ているのかは、経験だけでは確かめようがないもの。そこで、今回ご紹介する「chatGENE」で何を知ることができるのかを見ていきましょう。
chatGENEは、自宅で唾液を採って送る遺伝子検査です。体質や特性を含む400項目の中に「運動」の区分があり、公式の項目の一覧には、例えば次のような項目が並んでいます。右の列は、研究でわかっていることと合わせて読むときに、思い出しておきたいことです。
| 公式の項目名 | どんな傾向か | 研究と合わせて読むときに |
|---|---|---|
| 筋肉の発達能力 | 筋肉のつきやすさ | 筋肉は年齢に関係なく鍛えられる、と国の資料は書いています |
| 短距離疾走能力・無酸素運動適合性 | 瞬発力が要る運動への向き | 短距離のトップ選手の中にも、ACTN3のXX型の人はいました |
| 有酸素運動適合性・心肺持久力 | 持久力が要る運動への向き | 長距離の選手の型の向きは、研究によってそろいませんでした |
これらの項目ごとに、自分の遺伝子の型から見た生まれつきの傾向を知ることができます。なお、公式の項目の一覧には、どの項目でどの遺伝子を調べているのかは書かれていません。商品ページとよくある質問にも、結果の読み方を専門家に相談できる窓口の案内は見当たりません。料金は、運動の項目だけの分ではなく、400項目すべてをまとめて調べる分になります。
申し込むと、キットが自宅に届きます。唾液を採る前の30分間は、食事・お酒・たばこ・ガムなどを控え、口をゆすいでおきます。唾液を採ったら、会員登録をしてアンケートに答え、検査に同意してから、キットを送ります。結果は、送った唾液が届いてから2〜3週間ほどで出て、スマートフォンやパソコンで見ることができます。
公式のよくある質問では、検査のデータは、遺伝の情報を扱う事業のための個人情報保護のガイドラインを基準に、厳重に保管されるとしているので安心です。
瞬発力と持久力のどちらの傾向が出ているのかを、生まれ持った遺伝子の型からのぞいてみたい方は、chatGENEを申し込んでみてはいかがでしょうか?
受けられるのは18歳以上の方です。妊娠中は、おなかの赤ちゃんの遺伝子が母親の唾液などに混ざり、結果に影響するおそれがあるため、受けることがすすめられていません。もし、検査を受けるかどうかにかかわらず、運動をしているときに、胸の痛みや息苦しさ、めまい、動悸、いつもと違う強い息切れを感じたら、すぐに運動をやめましょう。そのうえで、医療機関でお医者さんに診てもらってください。この検査では、いまの心臓や体の状態はわからないためです。
型がどれでも同じ、国がすすめる大人の体の動かし方
遺伝子の型がどれであっても、国が大人にすすめている体の動かし方は同じです。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、大人に向けて、次の3つをすすめています。
- 歩くこと、またはそれと同じくらい以上の強さで体を動かすことを、1日60分以上(1日およそ8,000歩以上)
- 息が弾み、汗をかく程度の運動を、1週間に60分以上
- 筋トレを、1週間に2〜3日
この1日60分には、通勤や買い物で歩く時間も入ります。ガイドでは、60分歩くとおよそ6,000歩、軽い家事などの動きがおよそ2,000歩に当たり、合わせて約8,000歩としています。
同じガイドでは、筋トレは、胸・背中・腕・おなか・おしり・脚などの大きな筋肉を、全身まんべんなく使うようにすすめています。少しずつ負荷を上げていくことと、筋肉を休める日をとることも大切だとしています。家で行う場合は、少しずつ負荷を上げていくことを前提に、無理をせず「できなくなるところまで行う」のが、いちばん簡単な目安とされています。その際、血圧が急に上がらないように、息を止めないようにしましょう。
例えば、月曜と木曜を筋トレの日にして、スクワットや腕立て伏せのように自分の体重を使う筋トレをしてみます。息が弾み汗をかく程度の運動は、20分を週に3回行えば、合わせて60分になります。もし、いまほとんど運動をしていない場合は、ガイドにあるとおり、強さや量を自分に合わせて、できることから始めましょう。今よりも少しでも多く体を動かすことが、出発点になります。
なお、腰やひざの痛みなど運動で悪くなるおそれのある所がある方や、血圧が高い方、糖尿病などで通院している方は、運動を始める前にかかりつけのお医者さんに相談してください。
遺伝子検査の結果を読む前に、あわせて読みたい記事
遺伝子検査キットで、運動のほかに何がわかり、何がわからないのかは、遺伝子検査キットで何がわかる?の記事でも説明していますので、ぜひご覧ください。
また、結果に出てくる「傾向」や「リスク」の言葉をどう受け止めればよいかは、遺伝子検査の結果の見方の記事でお伝えしていますので、こちらもあわせてご覧ください。
出典(2026年11月1日確認)
- Yang N, et al. ACTN3 genotype is associated with human elite athletic performance. American Journal of Human Genetics. 2003;73(3):627-631(オーストラリア。一般の白人436人と、14競技のトップ選手429人。XX型は一般18%・短距離6%・長距離24%。αアクチニン3は速く動く筋線維で働く)
- Saito D, et al. The ACTN3 R577X nonsense allele is under-represented in elite-level Japanese endurance runners. 体力科学(Japanese Journal of Physical Fitness and Sports Medicine). 2011(日本の長距離のトップ選手79人と一般の人96人。国際大会の選手でRの割合が高い)
- Akazawa N, et al. The association of ACTN3 R577X polymorphism with sports specificity in Japanese elite athletes. Biology of Sport. 2022(一般の日本人649人のうちXX型26%。瞬発力の競技のトップ選手120人のうちXX型18%)
- Webborn N, et al. Direct-to-consumer genetic testing for predicting sports performance and talent identification: Consensus statement. British Journal of Sports Medicine. 2015;49(23):1486-1491(才能の見極めやトレーニングの決め方に遺伝子の検査は役立たない、という研究者の考え。子どもや若い選手には受けさせない)
- 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023 成人版|厚生労働省(1日60分・およそ8,000歩、息が弾み汗をかく運動を週60分以上、筋トレを週2〜3日、強さや量を自分に合わせてできることから)
- 筋力トレーニングについて(健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023)|厚生労働省(大きな筋肉を全身まんべんなく、少しずつ負荷を上げる、休む日をとる、年齢に関係なく鍛えられる、家では「できなくなるところまで」、息を止めない)
- 身体活動・運動を安全に行うためのポイント(健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023)|厚生労働省(運動中に体調の異変を感じたら直ちに中止。胸などの痛み・めまい・動悸・いつもと違う息切れ。運動で悪くなる腰やひざの問題は、あらかじめ医師に相談。血圧が高い場合・糖尿病の場合の医療機関の受診や医師への相談)
- chatGENE 解析項目一覧|KEAN Health(「個人特性 › 運動」の区分。筋肉の発達能力・短距離疾走能力・無酸素運動適合性・有酸素運動適合性・心肺持久力 など)
- chatGENE 商品ページ|KEAN Health(15,400円・税込・送料無料・唾液を採る・18歳以上・検体の到着後2〜3週間・スマートフォンやPCで見る)
- よくあるご質問|chatGENE(株式会社KEAN Health)(唾液を採る前30分の注意と口をゆすぐこと・遺伝子情報は基本的に生涯変わらない・現在の健康状態を診断するものではない・妊娠中・検査データの保管)
この記事は、国や学会が公開している資料と、公開されている論文をもとに構成しました。数値と出典は一次資料と照らして確認しています。
診断や治療をするものではありません。
検査結果について気になることがあれば、検査を受けた医療機関か、かかりつけの医師にご相談ください。

