久しぶりに親と出かけたとき、階段や坂道で、前より足取りがゆっくりになったと感じたことはありませんか?
年をとると筋肉が落ちるとはよく聞くものの、どこの筋肉が、どれくらい変わるのかは、意外と知らないものですよね。
そこで、今回は年齢で変わる筋肉の量についてお伝えしていきます。
この記事では、年齢とともに筋肉の量がどう変わるのか、とくに減りやすい体の場所はどこか、そして国が高齢の人にすすめている体の動かし方を知ることができます。
筋肉の大事な材料は、食事のたんぱく質
筋肉の大事な材料は、たんぱく質です。長寿科学振興財団の解説では、たんぱく質は、筋肉や臓器など、体をつくる要素としてとても大事なものだと説明されています。
そのたんぱく質のもとになるのが、食事からとるたんぱく質です。同じ解説では、食べたたんぱく質はアミノ酸に分解されて吸収されたあと、体に必要なたんぱく質に作り直されると説明されています。
75〜84歳の脚の筋肉は、18〜24歳より約3割少ない
日本人の筋肉の量を、年齢ごとに調べた研究があります。18歳から85歳以上までの日本人4,003人(男性1,702人・女性2,301人)の筋肉の量を、体の場所ごとに測った研究(2010年)です。
この研究で、脚の筋肉の量の平均は、次のとおりでした。
| 年齢 | 男性の脚の筋肉 | 女性の脚の筋肉 |
|---|---|---|
| 18〜24歳 | 20.7kg | 14.5kg |
| 45〜54歳 | 19.0kg | 12.8kg |
| 65〜74歳 | 16.1kg | 11.2kg |
| 75〜84歳 | 14.6kg | 10.4kg |
75〜84歳の脚の筋肉の量は、18〜24歳と比べて、男性も女性も約3割少ない値でした。
一方で、腕の筋肉の量は、男性で18〜24歳が5.5kg、75〜84歳が4.5kg、女性で3.3kgと3.0kgでした。腕と比べると、脚のほうが年代による差が大きかったことになります。同じ「年をとる」でも、筋肉の量の変わり方は、体の場所によって違うのです。
なお、この研究は、同じ人を何十年も追いかけたものではなく、年齢の違う人どうしを比べたものです。ですので、表の数字は、それぞれの年代の平均の違いを表していて、一人ひとりの筋肉がこの数字のとおりに減っていくという意味ではありません。
衰えやすいのは、太ももの前・おしり・おなかと背中
厚生労働省の健康情報サイト「e-ヘルスネット」では、年をとると衰えやすい筋肉として、太ももの前の筋肉、おしりの筋肉、おなかと背中の筋肉が挙げられています。
これらの筋肉は、立つ、歩く、姿勢を保つといった、毎日の動きの土台になっている筋肉です。同じ解説では、重力に対して立った姿勢を保つ働きをする筋肉として説明されています。
なかでも太ももの前の筋肉は、同じ解説で、立ち上がる動きで主に働く筋肉とされています。年齢とともに衰えやすく、しかも毎日の暮らしで使う場面が多い筋肉だといえます。
国が高齢の人にすすめる、4つの体の動かし方
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」には、高齢の人に向けた推奨があります。まず、一人ひとりの体の違いをふまえて、強さや量を調整し、できることから取り組むこと、そして今よりも少しでも多く体を動かすことが挙げられています。
そのうえで、高齢の人にすすめられているのは、次の4つです。
- 歩くこと、またはそれと同じくらいか、それ以上の強さで体を動かすことを、1日40分以上(1日およそ6,000歩以上)
- 筋力・バランス・柔らかさなど、いくつかの要素を組み合わせた運動を、1週間に3日以上
- 筋トレを、1週間に2〜3日(上の運動に含めてもよい)
- 座りっぱなしの時間が、長くなりすぎないようにする
ガイドでは、40分歩くとおよそ4,000歩、家事などの軽い動きがおよそ2,000歩に当たり、合わせて約6,000歩としています。
いくつかの要素を組み合わせた運動の例として、ガイドでは、体操やダンス、ラジオ体操、ヨガなどが挙げられています。
座りっぱなしについては、同じガイドで、座っている時間が長く続くときは、例えば30分ごとというように、できるだけこまめに区切ることが大事だという報告が紹介されています。
体の動かし方とあわせて、はじめにお伝えした筋肉の材料、食事のたんぱく質のことも知っておきたいところです。年をとっても、国がすすめるたんぱく質の量(推奨量)はほとんど下がらないことを、高齢者のたんぱく質の目安は?の記事でお伝えしています。
親の1日は、「歩く時間」と「座っている時間」で見る
親の体の動かし方を見るときは、「歩く時間」と「座っている時間」の2つに分けて考えてみましょう。
歩く時間
電話で話すときや帰省したときに、「ふだん、1日にどれくらい歩いてる?」と聞いてみましょう。散歩だけでなく、買い物などで歩いている時間も合わせて考えてみます。歩数計やスマートフォンの歩数の記録があれば、一緒に見てみるのもよいでしょう。
座っている時間
次に、テレビを見ている時間や、座ったまま過ごしている時間がどれくらいあるかも聞いてみましょう。長く座ったままの時間があれば、ガイドで紹介されていたように、例えば30分ごとを目安に、座りっぱなしを区切る形が考えられます。
ここで大事なのは、ガイドの数字に届いているかどうかで、親を評価しないことです。ガイドでも、推奨の値に届かなくても、今より少しでも多く体を動かすことがすすめられています。
なお、ガイドでは、体の働きが落ちている高齢の人については、安全に気を配り、転ばないように注意することも挙げられています。けがや体調に気をつけて、無理をしないことも大切だとされています。
また、持病で治療を受けているときや、お医者さんから運動について指示を受けているときは、その指示が先になります。体を動かす量を増やす前に、かかりつけのお医者さんに相談して、その指示にしたがってください。
もし、持病が無くても、親の足取りや体の様子で気になることがあるときは、年齢のせいと決めずに、かかりつけのお医者さんに相談するように声をかけてみましょう。
転ぶことについては、世界の専門家がまとめた、高齢の人の転倒についての指針(2022年)があります。この指針では、この1年に2回以上転んだ人や、転んで手当てが必要なけがをした人、転んだあと1時間以上自分で起き上がれなかった人などには、医療の場で転びやすさをくわしく調べることがすすめられています。親からこうした話を聞いたときは、かかりつけのお医者さんに伝えて相談するように声をかけてみましょう。
筋肉の量で動く健診の数字と、筋肉の遺伝子
健診の血液検査で腎臓の働きを見る数字(eGFR)は、筋肉の量によって動くことがあります。その読み方は、eGFRとはの記事でも説明していますので、ぜひご覧ください。
また、筋肉の付き方には、生まれつきの遺伝子の違いが関わる部分もあります。筋肉に関わる遺伝子と、遺伝子検査で分かることは、運動能力は遺伝で決まる?の記事でお伝えしています。
出典(2026年11月3日確認)
- 日本人筋肉量の加齢による特徴(谷本芳美ほか)|日本老年医学会雑誌 47巻1号(2010年)
- QOLの維持・向上に大切な筋肉は?(谷本道哉)|e-ヘルスネット(厚生労働省)
- 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023 高齢者版(厚生労働省)
- 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023(厚生労働省)
- たんぱく質・アミノ酸の働きと1日の摂取量|健康長寿ネット(公益財団法人長寿科学振興財団)
- World guidelines for falls prevention and management for older adults: a global initiative(Montero-Odasso M, et al. Age and Ageing 51(9):afac205, 2022)
この記事は、国や学会が公開している資料と、公開されている論文をもとに構成しました。数値と出典は一次資料と照らして確認しています。
診断や治療をするものではありません。
検査結果について気になることがあれば、検査を受けた医療機関か、かかりつけの医師にご相談ください。

