栄養についての情報が多すぎて、自分には結局どの栄養素がどれくらい要るのか、わからなくなることはありませんか?そんなときに、遺伝子を調べれば自分専用の量がわかる、という説明を見かけると、気になってしまいますよね。
そこで、今回は遺伝子検査と栄養素の量の関係についてお伝えしていきます。
この記事では、栄養素をとる量の目安がどうやって決められているのかと、自分がいま足りているかを確かめる方法を知ることができます。
栄養素の項目で返ってくるのは、生まれつきの傾向
まず、そもそも遺伝子とは何か、というお話からしていきます。遺伝子とは、体の中でたんぱく質を作るための情報がまとまった、DNAの中の区切りのことです。DNAの並びには、人によって少しだけ違う所があちこちにあり、その違いの組み合わせを「遺伝子の型」と呼びます。遺伝子の型は両親から受け継いだもので、年を重ねても、基本的に変わることはないと言われています。
郵送で受ける遺伝子検査の中には、項目の一覧に「ビタミンD濃度」「鉄分濃度」のように、栄養素の名前が付いた項目が並ぶものもあります。こうした項目で返ってくるのは、その栄養素にかかわる、生まれつきの傾向です。
ですので、いま体の中にその栄養素がどれくらいあるかを測ったものとは異なります。検査会社のよくある質問でも、いまの体調や病気を診断するものではない、とはっきり書かれています。
とる量の目安は、年齢と性別などの集団ごとに決まる
国が示している、とる量の目安は、遺伝子の型で分けて決められているわけではありません。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、栄養素ごとの量は、例えば「30〜49歳の男性」のように、年齢と性別などで分けた集団ごとに決められています。妊娠中・授乳中の女性には、ふだんの量に足す量(付加量)が、別に決められています。自分の年齢と性別の数字は、厚生労働省が公開している、この基準の表で確かめることができます。
この基準の中には、「推定平均必要量」と「推奨量」という2つの数字があります。
- 推定平均必要量: その集団の人たちに必要な量を調べ、その平均を見積もった量
- 推奨量: その集団のほとんどの人(97〜98%)が、足りている量
必要な量は、同じ年齢と性別の人どうしでも、人によって違います。推奨量は、その人による違いを調べたうえで、集団のほとんどの人が足りるように決められた量です。ですので、遺伝子の型を知らなくても、推奨量を目安にとっていれば、同じ集団のほとんどの人は足りる、という考え方になります。
なお、推奨量は「足りる」側の目安です。とりすぎの側には、別に「耐容上限量」という数字があり、健康に害が出るおそれがないとされる、ふだんとる量の上限が決められています。
食べ方を変えた助言のもとは、型ではなく、いまの食事
遺伝子の型を知らせると食べ方が良くなるのかを、確かめた試験があります。
ヨーロッパの7か国で行われた「Food4Me」という試験(2017年に報告)では、大人を4つの組に分けて、インターネットで食事の助言をしました。
| 組 | 助言のもとにした情報 |
|---|---|
| 1 | ふつうの、だれにでも向けた食事の助言 |
| 2 | その人の、いまの食事 |
| 3 | いまの食事に、体の測定と血液の値を足したもの |
| 4 | いまの食事に、体の測定と血液の値と、食事にかかわる遺伝子の型5か所を足したもの |
最後まで参加したのは1,269人です。6か月後、一人ひとりに合わせた助言を受けた組(2〜4)は、ふつうの助言の組より、赤身の肉・塩・飽和脂肪(肉の脂などに多い脂)をとる量が減り、葉酸(ビタミンB群の1つ)をとる量が増えていました。
一方で、いまの食事に、血液の値や遺伝子の型の情報を足しても、助言の効き目が高まったという結果は出ませんでした。食べ方が変わった組(2〜4)に共通していたのは、遺伝子の型ではなく、自分のいまの食事にもとづいた助言でした。
いま足りているかは、食事の中身と一部の血液の項目で
まずは、自分がいま何をどれくらい食べているかを知ることです。Food4Meの試験でも、助言の出発点になったのは、一人ひとりのいまの食事でした。
もう1つは、血液の検査です。栄養素によっては、いまの体の中の量の目安を、血液で見ることができます。例えば、鉄はフェリチン(体にためてある鉄の量の目安)、ビタミンDは血液の中の濃度です。ただし、マグネシウムのように、血液の値だけでは足りているかがわかりにくい栄養素もあります。
それぞれの読み方は、フェリチンとは、ビタミンDの血中濃度、マグネシウムの血液検査の記事で説明しています。健康診断に入っていない項目を測りたいときの頼み方は、健康診断にない血液検査は病院で頼める?の記事でお伝えしています。気になる項目があれば、あわせて読んでみてください。血液の検査の結果について気になることがあれば、検査を受けた医療機関で、お医者さんに相談してください。
もし、病気の治療中の方や、お医者さんから食事の指示を受けている方は、栄養素の量を自分で決めずに、その指示にしたがってください。また、体の不調が続いているときは、栄養素の量を自分で変えて様子を見るより先に、医療機関でお医者さんに診てもらってください。
今日1日に食べた物を、量まで書き出す
今日1日に食べた物を、量も一緒に書き出してみましょう。書く物は、手帳でもスマホでも、手近な物でかまいません。
例えば、私のある日の夕食は、ご飯と豆腐の味噌汁、餃子1人前でした。こう書くと、餃子は「1人前」と量がわかりますが、ご飯がお茶わんに何杯か、味噌汁が何杯かはわかりません。量は、「ご飯 お茶わん1杯」「味噌汁 1杯」のように、ふだん使う器の数で書いておきます。
量まで書いておくと、気になる栄養素をどれくらいとっているかを、文部科学省の「日本食品標準成分表」(食品ごとに、含まれる栄養素の量をまとめた表)で調べるときの手がかりになります。気になる栄養素が血液で測れるものなら、先ほどご紹介した記事で、その項目の読み方を確かめてみてください。
遺伝子検査キットでわかることの全体は、別の記事で
遺伝子検査キットでわかることと、わからないことの全体は、遺伝子検査キットで何がわかる?の記事でも説明していますので、ぜひご覧ください。
出典(2026年11月1日確認)
- ワーキンググループでの作業を踏まえた総論及び各論の主なポイント|「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会 資料1(厚生労働省・2024年2月9日)(推定平均必要量・推奨量・耐容上限量の定義・97〜98%・「30〜49歳の男性」のような集団ごと・妊婦の付加量)
- 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書|厚生労働省(年齢・性別ごとの値の表)
- Celis-Morales C, et al. Effect of personalized nutrition on health-related behaviour change: evidence from the Food4Me European randomized controlled trial. International Journal of Epidemiology. 2017;46(2):578-588(欧州7か国・1,269人が最後まで参加・6か月。血液の値や遺伝子の型の情報を足しても、助言の効き目は高まらなかった)
- 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年|文部科学省
- chatGENE 解析項目一覧|KEAN Health(「栄養素」の区分の項目名。ビタミンD濃度・鉄分濃度 など)
- よくあるご質問|chatGENE(株式会社KEAN Health)(現在の健康状態を診断するものではない・遺伝子情報は基本的に生涯変わらない)
この記事は、国や学会が公開している資料と、公開されている論文をもとに構成しました。数値と出典は一次資料と照らして確認しています。
診断や治療をするものではありません。
検査結果について気になることがあれば、検査を受けた医療機関か、かかりつけの医師にご相談ください。

